特定非営利活動法人ジェンにはどのようなスタッフがいるのか…ジェンは、どのような活動をしているのか…。より深くジェン知っていただくため、インターンがスタッフにいろいろなことを聞いてみました。
Matsuura:今ちょうど終盤に差し掛かっているのが、ナンガルハルというアフガニスタン東部の県で実施している水衛生の事業です。大きく二つの柱があって、一つは、安全な水を提供すること。井戸を作って汲み上げた水を、高低差を使って住民の方々の住居近くにある給水所の蛇口まで通すというものです。もう一つは、衛生教育です。地域住民の方々は基本的な衛生知識を持っていないことがあります。例えば、日々の飲み水を必ずしも安全ではない浅い井戸や小川、水たまりのようなところから汲んできていて、それが下痢の原因になりうることを知らない場合があるのです。なので、そういった水の危険性や安全な水の正しい保管方法等をお伝えしています。あとは新型コロナウイルス感染症の対策として必要なこともお伝えします。例えば、石鹸で手を洗う方がほとんどいない地域なので、石鹸を使うことの重要性や手洗いが必要なタイミングなどに関する衛生教育をしています。また、合わせて衛生キットもお配りしています。石鹸、タオル、コップ、歯ブラシ、トイレットペーパー、水のタンク、生理用品などです。これらがナンガルハル県チャパルハル地区で行っている事業です。
Matsuura:そのほかにも、アフガニスタンでは首都カブールより少し北西に位置するパルワン県で、ゆめポッケ事業を2001年から行っています。日本のドナーさんが、お子さんを中心に、文房具やおもちゃが入った“ポッケ”を準備してくださります。ドナーさんは世界各地の紛争で厳しい状況にある子どもたちの心のケアや励ましの意味を込めてゆめポッケを作られています。ジェンはゆめポッケを現地でお配りするところを担当していて、昨年末の11月上旬から下旬にかけて6241個のゆめポッケを子どもたちにお届けできました。
あと昨年は、越冬支援も行いました。昨年8月末にパルワン県のチャリカを中心に大規模な土石流災害があり、チャリカだけでも159人の方が亡くなられました。長年支援している地域で起きた災害だったこともあり、ジェンでも何かできないかと考えました。住む家を失いテントで暮らす方や親戚や友達の家に身を寄せている方もいて、必ずしも暖房器具があるわけではないことから、暖かく過ごせるようにサンダリ(日本のこたつのようなもの)や防寒着をお届けしました。チャリカは標高の高い地域で冬が目前だったので、まずは暖かく過ごせることが重要になると考えました。
Matsuura:まず、ジェンでは自立支援をとても大事にしています。私は大学の時、国際的な支援がたくさん入るような厳しい状況にある方々は、支援に慣れてしまい、待っていれば誰かが手を差し伸べてくれるという発想が生まれることがあると学びました。そうした発想に陥ってしまうことは、とても危険なことだと思っています。何か危険なこと起きた時は、国際社会から支援金がたくさん集まるのですが、ずっとは続かない。最終的には自分の手で自分の生活を支えられるようにならないといけないと思うのです。一方的に与え続けるような支援だと、私もそうですが、人はどうしても楽をするように考えてしまうものですよね。ジェンは長期的な視点で考えて、自立支援事業を通してその地域の方々が自らの手で生活を再建することを大事にしています。水衛生の事業も井戸管理委員会は住民の方々で構成されて、メンテナンスを皆さんでしていただく。この井戸と給水所は皆さんの物なので皆さんの手で守っていってくださいとお伝えします。支援は後世にわたってずっとできるわけではないので、そういうところを重視しています。
個人的に気を付けていることは、先入観でものを言わないことです。私は昨年の6月にジェンに入職してこの業界に入って間もないため、知らないことがたくさんあります。東京にいる日本人の私が、現場の状況を理解せずに先入観を持って「あれはこうすべきだ」と言ってしまうと、非常に危険だなと思っています。上下関係はありませんが、現場のスタッフは「本部がこう言っているから従わなければ」と思ってしまうかもしれません。そのことを心に留めつつ、先入観でものを言わないように「日々の生活はどのようになっているのか」をなるべく現場のメンバーに聞いて、理解をするように努めています。
Matsuura:ジェンが重視している「自立支援」に共感し、元々私はマンスリーサポーターとしてジェンを支援していました。自分の経験として「自分で自分のことを支えられて、選択する自由が自分にあること」はものすごく大事なことで、そういう意識があるとないとでは、生きやすさが違うと思います。もちろん自分一人の力で生きているとはまったく思いませんが、経済的な自立は、精神的な自立や自信にも影響してくると私は思います。
一方で、自立するのが今は難しい状況にある方々が世の中にはたくさんいます。そしてその理由は、暮らしていたところがたまたま紛争地となったから、育ったところがたまたま「女子に教育は不要だ」と考える人の多い地域だったから、生まれついたのがたまたま迫害されている人種や民族だったから・・・などさまざまです。そういった状況を改善するための支援の仕事に就きたいと前から思っていました。自立を支えるところで働きたいと思い、新卒では一般企業に勤めましたが、縁あって今ジェンで働いています。
Matsuura:いろいろな視点を持つには、いろいろな人と話すことが大事かなと思います。人は比べることで何かを認識し、自分のことを理解できるのではないかと思います。色んな人と話してみることが、自分の軸を決める、成長させる、知識を深めるために重要だと思っています。今までアフガニスタンやパキスタンの方と深い話をする機会はなかったので、こういった視点でものを言っていいかどうかと慎重になりながらも、話すことでいろいろな視点を持つということを大切にしています。
Matsuura:「後悔しない」というのは決めています。反省することは必要ですが、後悔しても過去は変えられないですよね。後悔しないために、今持っている情報の中で予測を立てて、その時できるベストな判断をするように心がけています。結果うまくいかないこともありますが、その時ベストだと信じたうえでの判断なので後悔はしません。私は直感的に考えることも多いですが(笑)。それでも自分の判断を信じて後悔しないようにしています。
Matsuura:この業界ならではの経験や知識を積んでいきたいです。また、この支援業界でまだ自分の軸を持てていないので、自分がどこに軸を置いていくのかを決めたいです。今すぐでなく、経験を積んだ先にこの業界のプロフェッショナルとしての軸を持ちたいです。
【松浦さんがお話しされたアフガニスタンの事業】
▼アフガニスタン 現在の活動内容
▼アフガニスタン コロナ禍での今年のゆめポッケ事業
▼アフガニスタン 越冬支援のモニタリングを実施しました